「500円で東京」の男

 

「500円で東京」の男に会った事は無いのだけど、沖縄にある「夢有民牧場」という牧場ゲストハウスでの10年以上昔の衝撃的で刺激的な話。

沖縄を一人旅していたぼくは、旅人にさそい誘われながら夢有民牧場にたどり着いた。

夢有民牧場の主人はそれはそれはワイルドでおもしろい、メチャクチャかっこ良いおとうさん。

なぜか支払いはドル払い。たしか一ヶ月くらい滞在したら永住権のようなものがあり、お手伝いをしながら一緒に暮らせる。

人望があり、夢有民牧場のお父さんお母さんが大好きな人が長期滞在したり、きゅうに「ただいまー」みたいにして帰ってきたりという、夢のような世界。

ぼくもイッパツでこの場所を好きになった。

何日か滞在していたある日の夜、このお父さんが息子の話をし始めた。

 

「うちの息子は500円玉とギターもって『東京行ってきまーす』って出かけていって、数日後に『東京ついたよー』と電話してくる。いつ帰ってくるかもわかんないし、かわったやつだ。」

って。

 

だからぼくは「500円で東京」の男に会った事は無いのだけど、この話を聞いた時すごく憧れたのを覚えている。

だいたいの人は行きたいところがあったらまずそこまでの旅費を計算して準備していくと思う。

でも500円しか持っていないのだから絶対そんな計画もしていない。

ぼくが気になったのは「どうやって行ったか」ではなく「どうあればできるのか」ということだった。

だって、500円しか持っていないのだから「やりかた」でできるレベルの話ではない。

たとえばヒッチハイクとか、弾き語りをして稼ぎながら行ったとか、やり方が解ったとしてもそのやり方をすれば誰でもできるわけではないし、そもそもそんなことやろうと思っても実際にたった500円しか持っていないという完全無保険状態でやれるハートを持っている人はそうはいない。

だから、「500円で東京」の男のハートの部分。「ありかた」がとっても気になった。

ストンと人間社会に裸で身を委ねることができる。そんなかんじなのかなとかってに想像したりしていた。

ワイルドな父母にそだてられた子はとてつもない自分の「ありかた」を自然になんのためらいも無く、疑問ももたず手に入れたのだろう。

手に入れた事にも気がつかず、きっとそれが普通なのだろう。

 

ぼくはこの日からこれを「人間力」と名付けて、この「人間力」を持っている人に注目するようになったし、自分の「人間力」も育てたいなーとこの時から思ったんだ。

 

 

今日もヒビアトリエに来ていただいてありがとうございます!

     

 

 

夢有民牧場は今帰仁にあり、500円では那覇にすらたどり着けません。

どうやって海をわたったんだろうね。

 

 

  

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